プログラム
武満 徹:声(ヴォイス)
ベリオ:作品番号獣番 (日本語訳詩:宮本楓峯昭(宮本文昭))
ラヴェル:ステファーヌ・マラルメの3つの詩
ストラヴィンスキー:兵士の物語 (日本語上演/脚本・演出:榎本三和子)
武満徹:声(ヴォイス)

Fl.高本直

言葉を発しながら、楽器を発音する
「声」(1971)は、瀧口修造の詩「手づくり諺」の一節に触発されて書かれた作品。
武満は、この曲に合わせて瀧口の詩のフランス語訳を朗読するよう、スコアに書いている。
詩が語られ、それがフルートによって増幅される(言葉を発しながら発音する)ことで生まれる不思議な共鳴。
全体のスタイルに大きな影響を与えているのは日本的なもので、能の句読法とドラマ性を思い起こさせる。
「声(ヴォイス)」。鋭い緊張感―。
まさしく本公演の冒頭を飾るにふさわしい作品である。

【演奏時間:約5分】

ベリオ:作品番号獣番 (日本語訳詩:宮本楓峯昭(宮本文昭))

Fl.山内信英 Ob.小山祐生 Cl.勝山大舗 Fg.垣内紀子 Hr.佐藤のぞみ

〔朗読しながら、演奏する〕
馬や猫が登場する皮肉めいた詩を、プレーヤーがコミカルに朗読しつつ演奏するという、スリリングな作品。
タイトルの“獣”は、日本初演時に谷川俊太郎が原語タイトル“Opus No.Zoo”を「作品番号獣」
(“獣”は“十”のもじり)と訳したのが由来で、最近ではこのタイトルが定訳となっている。
日本語の歌詞は谷川俊太郎訳詞のものをはじめ、いくつか存在するが、
本公演では宮本楓峯昭(宮本文昭)氏による訳詩で上演する。
日本語上演は珍しいこの作品。この機会にぜひ体験して頂きたい。

【演奏時間:約10分】

ラヴェル:ステファーヌ・マラルメの3つの詩 溜息soupir / 叶わぬ望みplacet futile / 臀部より出でて ひと跳びでsurgi de la croupe et du bond

独唱:新井田さゆり picc.冨田朗子 Fl.沼尾真生子 Cl.佐藤由紀 BsCl.篠塚恵子
Pf.室伏琴音 Vn.黒木健太、三宅政弘 Va.村松龍 Vc.猿渡輔

〔詩を、演奏する〕
1913年、ラヴェル38才の作品。雅楽を思わせる東洋的な歌の旋律が特徴的な作品。

「ラヴェルがクラランに来ている時、私は『日本の抒情詩』を弾いて聞かせた。
彼は繊細で手の込んだ楽器の響きに魅了され、精妙な技巧に興味を持った。
彼は直ちに夢中になり、同じような作品を書こうと決心した。
まもなく彼は、マラルメの詩によるすばらしい『詩』を私に弾いてくれた。」
―イーゴル・ストラヴィンスキーの回想文より―

ストラヴィンスキーによる『日本の抒情詩』に触発されたという経緯からも伺えるとおり、
現代音楽を予見させる、機能を離れた曲展開、雅楽を思わせる楽器使いと和声、
強い東洋趣味を伺わせる大胆な主旋律など、ラヴェル後年の熟達した書法が遺憾なく発揮されており、
彼の作品の中でも特に東洋趣味の濃いものとなっている。

【演奏時間:約12分】

ストラヴィンスキー:兵士の物語 (日本語上演/脚本・演出:榎本三和子) 第一部 1.兵士の行進曲  2.小川のほとりの音楽  3.兵士の行進曲  4.パストラーレ  5.パストラーレ  6.小川のほとりの音楽  7.小川のほとりの音楽 第二部 8.兵士の行進曲  9.王様の行進曲  10.小さなコンサート 11.3つの舞曲  12.悪魔の踊り 13.小さなコラール  14.悪魔の歌 15.大きなコラール  16.悪魔の勝利の行進曲

指揮:川瀬賢太郎 語り:黒木佳奈 パフォーマンス:井上亜沙美、岩見玲奈、住吉絵里子、稲瀬祐一
Vn.中川直子 Cb.小宮正寛 Cl.市川徹 Fg岡田香織 Trp.多田将太郎 Trb.山口遥平 Per.柴原誠

〔語り、演じ、踊り、演奏する―『兵士の物語』〕
作曲家自身により、<語られ、演じられ、踊られる物語>と注釈が付された作品。
当時、世界は最初の大規模な戦争を経験しつつあった。
大編成オーケストラによる演奏会を開くのは容易ではなかった。
小回りの利く楽器編成で「旅の一座」のようなことができないかと思案したストラヴィンスキーが
友人の作家シャルル・フェルディナン・ラミューズの台本を得て結実させたのが、この作品である。
音を聴くだけでなくストーリーを追うことで、聴き手は受身に留まらず、巻き込まれていく。
川瀬賢太郎の指揮によって紡がれる音楽。そして、語りとパフォーマンス。
本公演のため新たに脚本された語り手の台詞にも注目である。
今回のプログラムの目玉である『兵士の物語』。
言葉だけでは伝えられない鼓動と、音だけでは奏でられない言葉を語り―本公演は幕を閉じる。

【演奏時間:約60分】